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クマに“お仕置き” 人と共生へ秘策(産経新聞)

 人とクマは共生できるのだろうか。ときに、餌を求めて畑を荒らしたり、人に危害を与えたりすることもあるクマを、人里に近寄らせないように、唐辛子スプレーを吹き付けて“お仕置き”をしてから山に返す取り組みが効果を上げている。これまでは、被害を起こしてしまえば殺処分が避けられなかったクマを生かすための秘策だ。クマが食べる野山の木の実は、今年が凶作の年に当たっている。秋にはクマの人里への出没が増えると予想されており、こうした取り組みに注目が集まっている。(天野健作)

 クマやシカの生態調査などを実施している「兵庫県森林動物研究センター」(丹波市)は、平成15~20年度までに捕獲したツキノワグマにGPS(衛星利用測位システム)を装着し、その後の行動を監視している。

 野山に放つ際には、唐辛子スプレーのほか、大声を出したり、轟音(ごうおん)玉と呼ばれる煙火やロケット花火をクマが逃げる方向にめがけて投げつけたりする。

 こうした“お仕置き”をすることで、クマに「人が怖い」と教え込み、二度と人里に近寄らせないようにするのだ。この取り組みは「学習放獣」と呼ばれ、広島県などでも実施例があるが、放獣後の本格的な追跡調査を始めたのは同センターが初めてとなる。

                   ◇

 同センターの横山真弓・主任研究員(獣医学)によると、追跡した64頭のうち、約7割の45頭は人里へ再び出没することはなく森の中にとどまった。19頭は再出没があり、そのうち10頭は殺処分された。

 兵庫県では過去10年間に7回のクマによる人身事故が発生している。クマは基本的に用心深く、人に気付くと逃げることが多いが、まれに大きなつめと牙で一撃を与え、重傷を負わせるケースがあるという。

 兵庫県のツキノワグマは絶滅危惧種に指定されていることもあり、殺処分は人間を守るための苦渋の選択でもある。

 学習放獣の効果もあって、平成12年度に県内で15頭だった捕殺頭数は、近年は数頭にとどまっている。20年前までに推定100頭程度だった生息数も、現在は200頭以上に回復したとみられるという。

                   ◇

 ドングリなどの木の実がたくさんなる豊作年のときはクマの目撃件数は減るが、今年は2年に1度の凶作年にあたる。凶作年には県内のクマの目撃件数が豊作年の約10倍に当たる千件近くに上ることもあるという。昨年が大豊作だっただけに今年は大凶作になるのではとの予想もある。

 県では目撃情報をもとに必要に応じて現場に出動し、被害にあわないための指導助言を行っている。横山さんは「人里への出没は夜間だけでなく早朝、夕方にも及ぶ」という。

 クマを寄せ付けないためには、軒先にある柿や栗を早めに収穫したり、生ゴミを屋外に放置するのをやめたりしなければならない。

 横山さんは「クマも人に合わないように努力している。人間側の取り組みも必要だ」と訴えている。

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